2012年8月10日金曜日

トイレの水が止まりません


先週、ホームステイから一人暮らしのアパートに引っ越した。

勤務先がタシケントのど真ん中にあるエリート大学なのだが
そこまで歩いて通える超都心のアパートである。
大きめの冷蔵庫も炊飯器も掃除機もあるし
前任者が全部置いていってくれたおかげで
調理器具も日用雑貨もすべて揃っている。

他国の隊員が
「生活用水は1人1日バケツ1杯」とか
「ガスがなくて薪で調理」とか言っているなかで
申し訳なくなるくらいの便利ぶりである。

唯一の難点は、大家さんがロシア語話者だということだ。

ウズベキスタンの公用語はウズベク語だが
21年前までソ連だったので
ロシア人も多く、ロシア語話者も多い。
また、ソ連時代は公教育がロシア語でなされていたので
ウズベク語話者もロシア語を理解する。

大家さんは、宮崎アニメに出てきそうな
背が低くてしわしわで、口だけは達者なおばあちゃんである。
ロシア語話者だが、一応、ウズベク語も話せる。
話せるのだが、話しているうちにロシア語になってしまう。
そして、人の話を聞かずにしゃべり続ける。ロシア語で。

☆☆☆

引っ越してから
トイレの水が完全に止まらないことが気になっていたのだが
大家さんと電話で話すのが面倒でしばらく様子をみていた。
しかし状況は悪化。タンクに水が溜まらないほど
水が流れっぱなしの状態になったので
意を決して大家さんに電話した。

話、通じず。

困って、隣の人に助けを求めた。

うちの隣には、太ったメガネのおばさんが住んでいる。
名前を仮にミツコさんとしたい。
ミツコさんもロシア語話者である。
ウズベク語はほとんど通じない。
しかし、直接会ってしまえば何とかなるもので
トイレに連れて行ったら

「やだ、水が止まらないの? 大家さんには電話した?
 したの? 話は通じた? 通じてないの? どっちなのよ。
 まあ、いいわ、私が電話するわ」

と、たぶん、そういう内容をロシア語でまくしたてて
大家さんに電話してくれた。
そして、結果をまたロシア語でまくしたてる。
これが本当にまったくわからないので
ノートとペンを差し出してみたら、
ミツコさんは、ちょっと考えてから

18.00 Taim Master

と書いた。

ロシア語でも辞書をひけばわかると思ってメモを頼んだが
がんばって英語を書いてくれたようだ。
ミツコさん、親切。

「Taimはなんですか?」
「タイムよ。タイム」
「ああ! soat(ウズ語でo'clockの意味)ですね!」
「そうそう!」

ああ18時に大家さんが来るんだな、と思って朝の部は終了。

☆☆☆

夕方。

18時にミツコさんが修理屋さんを連れてきた。
「Master」は大家さんではなく修理屋さんのことだったらしい。

修理屋さんのマラットは、それが職業の人なのか
単に修理が得意な近所の人なのかよくわからないけど
とにかくよくしゃべるおじいさんだった。

「お前、ロシア語はしゃべれるのか? ウズベク語をしゃべる?
 そりゃあいいや。俺はウズベク語とロシア語と英語を話せるんだ。
 ○×△☆~。
 日本はいいよ。とにかくいい。アキラクロサワを知ってるだろ?
 そうそう、映画監督の。彼はロシアで○×△☆~。
 技術もすごいしな。ソニー、パナソニック。○×△☆~。
 俺はロシア人でもウズベク人でもない。タタール人なんだ。
 ロシアで生まれて……「生まれる」ってわかるか?
 母親からさ、こうやって(ジェスチャー)」

「○×△☆~」の部分は聞き取ることができなかった。
それでも「はあ、はあ」と聞いていたら
ミツコさんがキッチンから私を呼ぶ。
「あなたがトイレにいると、作業が進まないから
 ちょっとこっちにいなさい」
ということらしい。
そして、トイレのほうを見ながら
人差し指でこめかみをトントンとたたいてみせた。
了解でございます、ミツコさん。

そんなこんなで1時間経ったのだが、なんと!

トイレはまったく直らなかった!

頼むよ、マラット!!

そして「いまはバケツで流してしのぎなさい。明日また来るから」
と言い残して2人は去っていった。
うーん、ちゃんと直るのかなあ???

2 件のコメント:

  1. トイレ流れっぱなしって夢で見そうな珍事だね^_^;
    やっとブログを見に来たよ。
    これから先をさかのぼる~。

    明日に期待だ☆マラット~!

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  2. 「明後日」になったけど直ったよ!
    マラットじゃない修理屋さんによってネ☆

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